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2005.04.02

名古屋梅若六郎の会

新作能だが、作者が馬場あき子さん!
演じるのが、梅若六郎さん、というので、
名古屋まで足を伸ばした。

「小野浮舟」
源氏物語の中で、特に好きな登場人物ではない。
匂宮と薫の間で“翻弄された”女性…だと言う印象だけ。

結局、どちらも選べずに入水を図るが、失敗。
というのも哀しい。
僧に助けられるが、美しく魅力的なので、彼女を
見初めた男に求婚されたりするが、
思いがけないほどの意志のつよさで「出家」。

尼になった浮舟を、
弟の小君と侍女右近を伴って母が尋ねてくるのが
始まり。
橋懸りを歩いてくる小君、とても愛らしい。
母役の山本博通さんも落ち着いた感じだった。

この舞台は京都の比叡山の近くと言われていて
地名に対して親しみもある。

浮舟は作り物の「庵」のなかに座っている。
引き回された覆いが取り除かれた瞬間、

“うら若く愁いを含んだ、寂しげな面が真っ直ぐ目に
入ってくる。
そして…尼の衣の色(鈍色)がさらに美しさを引き立てている”

ものの本に「尼姿がろうたけている」とか
「尼になった姿にますます未練を感じられて」など
書かれているが、
「墨染めの衣」が尼さんの衣だと思い込んでいたので
そんな姿で
美しさが勝ることなんてあるはずがない、と決め込んでいた。

この日の六郎さんを観て、はじめて王朝物語の
そぎ髪の尼姿を思い描くことができた。

朗々とした美しい声。
ゆったりとした舞姿。
母たちを見送る眼差しのしっとりとした確かさ。

浮舟にとっては、これから自分の人生が始まるのだ
女性が自分に目覚めていく
「現在もの」のドラマでありながら、
艶に優しい風情も充分。
子供、母、友人(侍女)、女、と
「女性が創り女性が舞う能」とは
こういうものか!と感動した。

その謡や舞をひきたてるお囃子も初々しくて
よかったが、中でも
松田弘之さんの笛。
浮舟の回顧のときの嫋々たる音色。
するするさらさらと流れてまつわりいろどる、
この笛の音に浮舟の全てが顕れている。

特筆=お能が終わって、お囃子方、地謡、後見が
全員舞台から去るまで
「拍手」はまったく起こらなかった。
プログラムに書いてあったわけでもない。

しんと静まりかえった舞台に響くのは
衣擦れの音のみ。

無人になった舞台に向かって
長い拍手。

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