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2005.11.04

湖北の舞台~淡海能

湖北の城、彦根城。
譜代大名の井伊家は
琵琶湖の水運を引き受け、
都の出入り口をしっかり固める役目であった。
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いまでは、春は桜の名所として知られる。
駅はまだまだひなびた雰囲気を残しており、坂をゆるゆると
登っていくと、二十分ほどでお城の下に着く。
道がまっすぐ見通せないようにまがっているのが、
昔習った城下町の作りである。

例に洩れず公園になっているお堀前の道をたどり、
古風な橋を渡って、石垣の間から、
ただいまは博物館になっている
お城の中に入る。
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庭はすぐ横の道をずんずん天守閣のほうに上がっていくらしいが
観たい観たいとおもうけど、去年も今年も割愛した。

きょう来たのは、
滋賀県立大能楽部の公演「淡海能」を観るためである。
去年も来て楽しかったので味をしめたのと、
平日に、ちょっとした旅気分でたっぷり仕舞やお能が
観られるので嬉しいのだ。

着いたのは定刻より少々遅れ、見所は満員。
ここの舞台は半屋外で、
舞台に屋根があるのは普通だが、
客席はすこし離れてこれも屋根の下。
でもその間は吹き抜けで、
よく晴れた上天気、お日さまは舞台半分を照らしている。

明るくてよいけれど謡ったり舞ったりする人にとってはどうだろう。
衣装も装束も、外光だからくっきりと見えて、
幽玄な感じは減じるが、健やかで明るい会である。

観光客がふらりと出たり入ったり、
ずっと観つづけている人も居る。
不思議なのは、マナーがとてもいいことだ。
ごそごそするひとも少なく、出入りも切れ目にそっとだし、
有料のお能の公演より静かだ。(無料なのです)

素謡、仕舞、連吟、
どれもよく言葉がわかり、
パンフレットに解説が書いてあって親切で、
ちょこちょこ見ながら楽しむ。
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150席くらいだろうか、よくよく聞こえる。
脇正面席、というのもあるのだが、
ガラスで仕切られた室内側にあるので、
はっきり観ようと思ったらやはり正面に座らねば。

お能は「船弁慶」
今年はあちこちでされる演目だ。
前シテの静御前が登場したとたん、
「わぁ綺麗」みなが息をのむ気配がした。

ややうつむき加減に歩んできて、シテ柱のところで立ち止まる。
優しくしとやかな静である。
義経の真意を聞きに行くときも、
やわやわとしたおとめらしさを失わない。

ワキ方も狂言方もお囃子方もプロの方々で、
しっかりとした周りがあるからだろうが、
練習の結果なのだなあ、と
感動してしまった。
(練習嫌いな自分が恥かしい)
後シテの知盛はこれまた、
出てきたとたんに、女性とは思えないほどの気合いに
圧倒される。
薙刀を構えるところも、義経におそいかかるところも、
朗々とした語りがはっきり聞こえて、
ドラマを追うのにたいそう楽だ。
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「船弁慶」ってこんなお能だったのだ、と
わかってとてもすっきりした気分だった。
舞台が明るいのも、助かった。
(暗いととてもみえづらいのだ)
謡と語りがわかれば、
お能は決してわかりにくくないのだ。
若いひとたちがこんなに楽しそうに舞っているのだもの。

感心したのは、義経役のひと。
お能ではこの役は子方がするので、
おとなのひとでどうなんだろうと思ったが、
まったく要らぬ心配だった。

知盛と弁慶が丁丁発止とやりあっているとき、
沈着な義経はしっかり座って自分の場を占めている。
迫る知盛に刀を抜いて立ち向かう段で、
はじめてためていた力を放つ。

明るかった光がやや薄れたころにお能は終わった。
来年もまた来よう、と思いながら帰る。
平日でありますように。

主催:滋賀県立大学能楽部
指導:深野新次郎 深野貴彦

※ 笛 杉 信太朗 小鼓 曽和尚靖 大鼓 石井保彦
 太皷 前川光範

 弁慶 原 大  船頭 茂山 正邦

 地謡 浦田保浩 浦田保親 大江信行 宮本茂樹
     越賀隆之 深野新次郎 深野貴彦

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コメント

ごぶさたです。

滋賀県大の能楽部は私が在学中に今の姿になった、まだ新しい部だったはずですが、年を追うごとにメキメキと腕を上げていました。

写真からでも伝わりますね。


彦根の舞台はものすごくバウンドするんです。
拍子踏むたびに扇がはねるくらい。
あ、そうそう。
私もその舞台で「船弁慶キリ」舞ったんでした!

投稿: 玉藻前 | 2005.11.09 20:36

いらっしゃいませ。
色々お世話になっております。

ここは、観ていて
ほんとうに気持のよい舞台です。
この時期はちょっと寒いですけど。


そうですか、ここで「船弁慶」を舞われたのですね。
足拍子はとてもよく響きました。
古い舞台はどこも風情がありますね。


投稿: korima | 2005.11.11 22:20

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