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2006.06.08

楽しいミステリ

ひらがなで「しゃばけ」、これは
いったいどんな意味、と不思議だったが
世にも珍しい、妖怪までも活躍するお江戸ミステリーである。
漢字で書くと「娑婆気」。
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この本は娘が見つけてきて
あっというまに私もはまった。
作者は畠中恵さん、わかいひとだ。
図書館で既刊分をみつけて、
いまんとこ四冊読みあげた。
新聞広告に新刊の案内があった。
「うそうそ」
全巻ひらかなの題である。
「ぬしさまへ」「ねこのばば」「おまけのこ」
ここまでくると、立派だね。

筋がまたすっきりと読みやすい。
短編の連作だから、一区切りついたら、
「残念だけどきょうは寝よう」と思えるのがよろしい。

ここしばらく、宮部さんの江戸ものの短編の新作がなくて、
さびしかったところだから、
気分にぴったり合ったのだ。
解説を読んでみると、
なんと都筑道夫さんの“お弟子”さんだと。
「砂絵師」シリーズその他で、
若い頃せっせと読んだっけ。
軽やかで明るいところが似ているかも。
017derumizuiro

設定がいい。
主人公は病弱な若だんな、彼は一応人間だが、
脇役のふたり、人間のふりをしているが
実は「妖怪」なんである。

ひとり(一匹かな)は凄いような色男で
ふむふむ、絵面がうつくしいなと思う。
私の気に入りは犬神であるもうひとり(一匹)
「いかつくて力もち」の番頭、佐助さんだ。

畠中さんのこのシリーズ、明るいけれどそのなかに
ぽっちりと泣かせるセリフがそこここに見え隠れ、
その配分がほどほどで快いのである。
“名前は呼べば呼ぶほど、そのものにしっくりぴったり
してくる”というフレーズなど、ファンタジーっぷりが
生きている。

いかつい顔つきの癖に涙もろい、
犬神くんの居場所があって、
読んでるこちらもほっとする。
何せ、弘法さんのころから、自分の落ち着き先を
探していたという妖怪だもの。
いいひとに巡り会えてよかったね、と
読んでいるこっちも安心してお茶を啜れる、ってもん。

後は妖怪のオンパレードで、「明るい」怪奇ものが
好きな人にはぴかぴかのお薦め本だ。

人間のキャラでは、
岡っ引きの「日限りの親分」さんがいいな。
若だんなに外の風を持ってやってくるこのひと、
実は大店が振る舞ってくれる菓子も目当てだが
やっぱり自分の手柄や困りごとも言いたくて、
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病弱ゆえに時間があって
気持ちのやさしい若だんなのとこで
楽しい居場所をみつけているみたい。

それぞれの妖怪たちも、この長崎屋の若だんなが
けほけほ咳している離れが
一番おちつくみたいである。
ぎしぎしと古家をきしませて人を驚かす鳴家(やなり)も、
猫又も屏風覗きもあれもこれも。
居つけなかったのは、貧乏神くらいのものだよ。
 ※画像は無関係です※

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