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2006.07.24

エクスプローラー賛歌(劇団新感線・「メタル・マクベス」)

「メタル・マクベス」を見たいと思ったのは、
橋本じゅんさんを見たかったからが一番の理由。
また、原作がシェークスピアなので興味があった。
官藤さんの脚本はいまの若い人に大人気とか。
「笑い」がやや苦手なわたしには
ちょっと不安な材料だったが、そこは飛び越えて。

主役は内野聖陽さん。
「エースをねらえ」の宗方コーチ役のひと。
変人の博士役でも見たことがある。
舞台ではどうなんだろう。
マクベス夫人役の松たか子さんは、
高麗屋ファンのわたしとしては、嬉しい配役である。

映画「阿修羅城の瞳」を見て以来、
新感線の舞台にはまり、
DVDで以前の舞台に遡ってみている。
DVDは何回みても、ビデオのように劣化しないからいい。
お気に入りの場面を何度繰り返して見ることか。
(テレビ本体が疲れてきているようだ…)

劇場で新感線の舞台を見るのはやっと二度目だ。
会場は厚生年金会館大ホールで、2千人以上入る大劇場。
正面にどんとある大画面、そこに、様々なものが映る。
バンドの演奏だったり、魔女のナベの中だったり。
筋や演技とリンクして画面が変わる。
二階からもよく見える。
さらに端っこの席用にテレビが置いてあって、
見えにくい角度の役者の演技や映像が流れる。
サービス満点だ。

時代設定は近未来、原作とはまったく違う。。
廃墟になったどこかの国(多分日本)
どこのなく「北斗の拳」に似かよった衣装。
翻るマントって、はとても魅力的だ。
新感線はよく衣装にマントや長い袖を使う。

みえを切るときにひらりとまんとが揺れると、
たとえ顔がみえなくても、はっとする。
舞台への集中度がよりたかまる。

始まりは、トレーナーを着た「魔女」たち。
男性(右近さん)もまじっているから、魔「女」ではないけど
パロディを交えながら快活なテンポで歌と台詞が飛び交う。
これはマクベスの始めの場面らしい。
そこにバイクを押して登場するのが内野聖陽さんとじゅんさんの
ふたり。たいそう疲れ切っている。
長髪、やせ型、セクシーな内野さんと
小太りモヒカンのじゅんさんの
畳み込むようなしゃべくり台詞と(ギャグありボケありツッコミあり)
駆け回る躍動感で、マクベスであってマクベスでない世界が
幕を開ける。

名前はみんなギターのブランド名で、とても覚えにくいが
ヘビメタバンド、「メタルマクベス」ではマクベスの登場人物に
役者さんの姓を繋いであって、これはたいそうありがたい。
原作と違っている部分だけきをつけて記憶すればよいから。

あらかじめ友人がパンフを送ってくれて、たいそう助かった。
やたらに豪華で重く、高い。
これを持って地下鉄の階段を
駆け下りられはしない、と思った。
観客の中には年寄りも居ることを、考えてほしいものだ。

じゅんさんの声はすぐわかった。
若くてはりがあって男前な声だ。
DVDで繰り返し、登場するシーンを抜き出して見ていた
甲斐があったようで。
いわゆる二枚目タイプでないところが、とても気に入っている。
持ち味は体を張ったギャグ…めったやたらにおかしい。
それだけの人ではない証拠は「吉原御免状」で知った。
(目を伏せて、弟の不始末を謝る兄の姿、静かな声)

バンド「メタルマクベス」では、陽気にタンバリンたたいて
歌う金髪のあんちゃん役。
苦労知らずの底抜けなにぎやかさが愛らしく、
屈折したマクベス内野とは対照的だ。
モヒカン頭さえ、「BEAUTIFUL!」にみえる。

マクベスの部分はほぼ原作どおりに進む。
ダンカン王が上條恒彦さん、息子がなんと森山未來くん。
マクダフは北村有起哉さん、その妻が高田聖子さん。
新感線のメンバーと客演のメンバーが
上手にミックスされている。
マクベス夫人の松たか子さんはデビュー当時の
初々しかったころから気に入っていたが、
もう堂々たる女優ぶりだった。
夫をそそのかす場面は強欲なまでのきつさ、
狂気におちいる直前は哀れではかない。
声に感情が乗っていて素晴らしかった、もちろん歌もすてきだ。
内野さんも、身のこなしの軽やかさや、
ピエロめいた台詞が出色で、声が聞きやすく明快な台詞回しで
色気のある主人公を造形している。
(いままでその魅力で気づかずごめんね、と言いたい)

時々、バンド「メタルマクベス」のシーンがさしはさまれる。
役の関係がほぼ同じになっているが、
こちらは歌を聞かせるのが主のようだ。
時代も「近過去」の80年代の設定。
がんがんと、たぶんヘビメタなんだろうな、と
思われる音楽が鳴り響く。かなりやかましい。
リードボーカル役の内野さん、歌はうまいけれど
やや余裕がない感じがする。歌っている間は
色気が“減る”のだ。
バラードのほうがお似合いだ。
軽薄でいい気な「マクベス」が、
人気が無くなり墜ちてしまう場面は
見ているこちらも胸が詰まる。
(※バンクォー橋本に対するいわれのない嫉妬にかられて、
彼の殺人を教唆し成功するが…
すでに彼の才能は涸れ果てていた。
乞食のような風体で、なおもうわごとのように、
「すごい音楽をやる」と繰り返すマクベス内野と、
彼を支えるのに疲れ果てた妻ローズ=メタルのときの
マクベス夫人の名である。)

それがそのまま、魔女の予言を信じて
裏切られたマクベスと、夫人の
哀しい運命とリンクするのが実にすてきだった。
4時間近いこの劇、
ちょっと疲れたときもあったが、
「歌入り芝居」には慣れているし、端役にも
新感線「らしさ」が見える配役で、
次々と趣向がこらしてあって楽しい。

ワキ役や大道具、照明などを見るのが大好きだ。
この大がかりな舞台はまるでロックコンサートのように、
場面ごとに赤から青、また赤に照明が変わる。

一度の観劇では細部まで見るのは不可能だ。
それほど待たなくても、
特典付きのDVDが発売されるだろうし、
その時には、座布団敷いてペット茶片手に
こまごまと役者さんの表情や、殺陣の華麗さなどなど
繰り返し、また返して楽しみたい。

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