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冬に名所へ

疏水べりから南禅寺、永観堂へのコースと言えば
春は桜、秋は紅葉、
観光シーズンにはいつ出かけても超満員である。

予定より早く出かけすぎて時間が余った。
まあ、そのつもりでカメラを持って来たのだけど。
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地下鉄の「蹴上」駅から、トンネルを通って南禅寺への
近道に出る。
金地院は以前に拝観したことがあるのできょうは割愛して
まっすぐ山門に向かう。
とても京都とは思えないくらい大きい門だ。
東山がころあいの借景である。

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拝観の人が少ない間に、と言うことだろうか
苔や木々が手入れ中だ。
空気が濃くて涼しい感じがする。
多分、春には人でいっぱいの山門にも
いまは二、三人しか登っていない。
それが点景になって、門の大きさがさらに映える。

寺々の塀も白い。
ところどころ土塀を修復している場所がある。
土壁に水をかけ、これは土を引き締めているのだろうか、
などと考えながら歩く。
疏水の分流が勢いよく流れている。
「雨が降らんとこれも涸れますなあ」と
のんびりふたりの女性が立ち話をしている。

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その先に永観堂の屋根がみえる。
いかにも「京都」らしい、観光寺院だ。
実に小綺麗で、それだけに素朴さは少ない。
境内がこじんまりしているのも特徴がもしれない。
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しかしそれぞれの寺に歴史があり、
戦火に遭わなかったから残った絵や仏像も多数ある。
この永観堂も、庭の一角は幼稚園になっていて、
「お帰り」の呼び出しの放送がきこえる。
目をあげると、小高いところに、美しい多宝塔が見える。
必死にならなくても登れる高さと距離である。
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樹々の骨組みがわずかに煙る春とも思えぬ夕暮れ
木の間がくれの塔は美しい。
秋はみっしり紅葉だろう。
池の面は常緑の樹木だけしか映していないが、
それはそれでとてもシンプルな風景だ。

池の中に弁天さまが祀られていて
それにかかる橋のカーブがとてもよい。
橋はひとつだけではなく、
どれも小さく弓形で、
あちらからもこちらからも見えるのがいい。
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建物の拝観料は六百円也で、
京都ではこれが普通の値だ。
お堂はどれもそこそこ広くてのびやか。
もともと真言宗だったのが、途中から浄土宗になり、
「永観」のときに大いに興隆したという。
拝観のパンフレットに、寺宝の
「みかえり阿弥陀」についての話が載っている。
何度も聞いた話なのに、実際に阿弥陀さまを見ると、
「こんな仏さまに振り返られたら嬉しいだろうなあ」と
思うほど、静かで優しい姿をしておられる。

釈迦堂も、阿弥陀堂もたまたま無人。
わたしがひとりで座っていても
だあれも入ってこない。
天井の高い、ひろい座敷で、ひとりほとけさまと向き合っている。
すると素直に手を合わせている
自分がとても不思議だ。
眼鏡を忘れて来たのでお顔は仄かにしかみえないが。
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中庭は特にこれといった感じではないが、
水がそこにあるだけで風情が。
御影堂のふすま絵がすごかった。
最近の画家のものだが
「二河白道」を描いていて
左手は氷煙があがる白
右手は紅蓮の炎の赤、
畳の薄縁がすっと真ん中を通っていて、
この仏教用語の意味が目のあたりに
納得できる素晴らしさだった。
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建物の古びとは似合わないのだが、
そういうことをちょっとしてしまうのが
京都のお寺らしい。

華々しい春や秋もよいが、
夏や冬、季節外れのこの時期にも、
静かで豊かな空間があるありがたさを
あらためて感じた。

そこから約束の場所までは徒歩十分、
時間通りに着けるのも、土地鑑があるおかげ。

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