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2007.08.29

「狐狸狐狸ばなし」…からくりくるくる

すごい
篠井さんは完璧に女に見えた。
薄い黒のカーディガン姿である。
手が長くて動きがとてもきれいだ。

この芝居の原作は北条秀司
白黒テレビの時代、
「新派」の舞台中継を年よりがよく見ていたが
そのころに聞いた名前に違いない。

でも目の前の舞台では
「吉原」や「職人」という言葉は飛びかうが
むかしの“情緒”たっぷりではない。

男ふたりと女ひとりの三角関係、と
チラシにあったので
どろどろしているかと思いきや
意外にコメディータツチである。

ギャグも連発されていて客席からは
たびたび、というかしょっちゅう
笑い声が起こっていた。

紙職人伊之助の妻おきわは僧重善と浮気している。
夫にはとうに愛想をつかしているのだが
重善が自分を捨てて
金持ちの女に乗り換えようとしていることを知り
ついに夫を殺してしまう。
ところが、おとむらいが終わったその日に
伊之助が平気で家に帰ってきた、しかも足がある…

間男の重善を演じる板尾さんが
けっこうハンサムに見える。
篠井さんの濃さと対比するからかな。
ヌーボーとした
なりゆきまかせのごく普通の悪人である。
女にはやたらにモテるらしい。
篠井さん演じるおきわは彼に対しては
声まで可愛くなってしまうのである。

また夫役のラサール石井さんの
面白さは予想以上だった。
「もとは芝居の女形」という設定で
しなを作ってなよっとして登場
客席は爆笑、続いて拍手。
上方に居たそうで、言葉の端々に
関西なまりが…それがまたおかしい。


主要な人物三人プラス一人
残る一人は六角さん。
彼は「幽霊騒ぎ」を起こす、かなめの役どころだ。
伊之助が雇った渡り職人又吉、
彼は一見、無能で役立たずに見えるが、

表の顔と裏の顔
声も二色演じ分ける器用さに感心した。
(テレビの「相棒」しか見てなかったので)

実はこの話の外側に
さらに話があるのだ。
入れ子になっているのでますます
おとぎ話めいている。

舞台の上部、背景の空の部分に通路があって
そこをひとが散歩したり
座敷(家)をのぞき込んだりする。
結構大事なやりとりがあったりするのだ。

客席からは
舞台で演じられる話をたどり
さらに外側のひとたちの話も
同時に見ていることになる。
この二重の錯視が
話にひねりをあたえている。

二つの話はそれぞれに進み
交わることはないのだけれど。

このお芝居の感想は書きにくい。

この話、筋はちゃんとあるのだが
それが一旦解体されて
もう一度作り直されたときには
ケラさんのテンポになっているようだ。
元のお芝居を知らないので
比較できない。
そして、わたしが心地よく感じる
「テンポ」については
とうてい言葉では表現できない。

「わあるど」に入りこんでしまえば
流れに乗って大笑い、中笑い、小笑いと
笑いに笑って気がつくとラストだった。


舞台は二つの三角を鱗形につなぎ合わせた座敷で
隅には仏壇がある。
○○のお寺の場面になるとこの部分に仏さまがいらっしゃる。
実はぐるっと回る仕掛けになっているのだ。
こういうところがとても面白く感じた。
“黒子”が水色の装束(あさぎ色?)を
着て、火の玉を飛ばしたりするし。

ドライな笑いに終始していたが
終盤におきわが“発狂した”場面になる。
呆けたようににたにた笑う顔もいいし
つま弾く三味線の音色もいい。

さすがにこれは本当なのだろうと見ていたら
これもまたひっくり返ってしまった。
彼女は「狂い」を装っていただけだった。

何もかも「ふり」
死んだ「ふり」
狂った「ふり」
愛想づかしをいう「ふり」
何がほんとの気持なのか
さっぱりわからない。
だから、世の中しょせんは「狐狸狐狸はなし」と
オチが付く…のかな。

舞台って
人物も音楽も効果音もみんな合わさって
ひとつの有機体のようなもののようだ。
観客として
それに参加できることの嬉しさ。

ケラさんのオリジナル作品の舞台を
秋には初めて見ることができる。
ブログによると
まだ脚本は始めの部分だけらしいが。


会場の兵庫県立芸術文化センターは
真新しくて足回りもよい。
私鉄の駅から屋根伝いに五分少々、
綺麗なレストラン、
木を使った温もりのある通路

など、気配りのあるホールだった。
これでもう少しロビーの照明が明るければ
申し分ないのだけれど。

残念でたまらないのは
公共のホールだからか
パンフレットの販売が無かったこと。
ぶっつけ本番で見て記憶して帰りなさいって
ことかな。
グッズやパンフもお芝居の一部なのに。

☆「狐狸狐狸ばなし」
 2007年8月21日(火) 2:00開演
 兵庫県立芸術文化センター

 作:北条 秀司
 演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ

 おきわ:篠井 英介
 伊之助:ラサール・石井
 重善:板尾 創路
 又吉:六角 精児

 真山章志、大出勉、廣川三憲、野間口徹
 小林俊祐、皆戸麻衣、植木夏十、サチコ 他

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