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2007.08.20

「お気に召すまま」~人形のような美女

なんだか蜷川さんばっかし見てる気がするが
シェークスピアのコメディ第二弾
「お気に召すまま」を観てきた。


原題は“AS YOU LIKE IT”
パンフレットに書いてあった。
古風ですてきな訳だ。
(「恋の骨折り損」も同様)
「恋の…」より戯曲が纏まっている。

ところはフランス
前領主は追放され
いまの領主はその弟、
娘がひとり
主人公のロザリンドは前の領主の娘で
叔父の家で従姉妹のシーリアと暮らしている

青年オーランドーは、父亡き後
兄オリヴァーからひどい扱いを受けている。
力試しに出場したレスリングの会場で
二人は会いお互いにひとめで恋に落ちる。

ロザリンドは領主に追われ、シーリア及び
道化のタッチストーンとアーデンの森に着く。
ここは前領主が悠々自適に暮らしている場所だ

オーランドーもまた忠実なアダムとアーデンに着き
父が信頼をよせていた前公爵にお目見えして、
手厚くもてなされる。

身を守るために
ロザリンドは男装してギャミニードとなり
その姿のままでオーランドーに再会する。

また前公爵の友人ジェイクイズは
仲間とともに狩に興じるありさまに批判的な言葉を投げる

おしまいには領主フレデリックは
領土を前公爵に返して隠居し
オーランドーはロザリンドと
シーリアはオリヴァーと結ばれる
(ついでに道化も村娘と結婚
めでたい結婚式が四組
メンデルスゾーンの結婚行進曲に乗って
執りおこなわれる。
めでたし めでたし

主役のふたりが若くて活きが良く格好いい。
成宮くんは大柄で目鼻だちがかっきりしていて
まるで宝塚の男役のような美人である。
小栗くんは色白ですらっとしていて
みごとに貴公子、幕開きのぼろぼろの身なりでさえも。

今回もオールメイル(全員男優)だが
違和感はまったく ない。

芝居が行われるのは
館の前庭と シーリアの部屋
後半はほとんどアーデンの森である
入り組んだ
木々は太く、奥深い森のありさまである。
舞台の後ろから登場するひとたちは
遥か遠くからきたように見える

ここに前公爵は
仲間とともに狩りをしたり歌ったりして暮らしている。
こころざしを同じくするものたちの
安定したコミュニティであるが
その世界は閉じられている。

劇が本格的に動き出すのは
この森の場面からである。

ロザリンドたちはよそ者として
村はずれの羊飼いの家を買い求め
兄妹を装って暮らしている。
オーランドーに再会したものの
しかし自分の身分を明かせず
それでも思いをおさえかねて
「ぼくを彼女と思って口説いてごらんなさい」
と挑発する彼女が可愛い。

男が女になりさらにそのロザリンドが
男装する、というややこしいからくりだけれど
内股で走ったり、腕に絡みつくところなど
成宮くんがちょっと誇張気味に面白くみせている。

このあたりからのシーリアが
とっても可愛いぼけっぷりである。
前半でクールにロザリンドをフォローしていた面影が消え
お腹が空きすぎて、くらくらと倒れるところ
(ほろほろと花のように、ではあるが)
で笑いが起こる。

完璧なほど美しく
人形のように無表情だったシーリアが
改心したオーランドーの兄、オリヴァーと出会って
またも一瞬のうちに
惹かれあう場面のおかしさ。
背中をぐっとそらしてぎりぎりまで見つめあうとき
恋は充分に喜劇である。

シーリア役の月川さんは
「恋の…」でもほんとうに女性としか見えなかった。
ただ前回はあまりセリフもなかったので
取り立てて個性的とは思っていなかったのだが。

ロザリンドがつい興奮したときに
さりげなく袖を引くその手の動きなど
目を離せない達者ぶりである。

若者たちの見目良さはそれとして
年配のひとたちが好演
従者のアダムは若だんなのローランドに付き従うが
口ほどにもなく旅の途中でへばってしまう。
この主従のやりとりが
何とも言えないくらいおかしい
ほんのりしたこういう部分が
この劇のあちこちにある。
道化役の田山さんの述懐もそうだ。
それより森の住人たちが全員おかしい。
貫禄ある前公爵の吉田さんも含めて。

アーデンのミニ宮廷の中でも
目立って才気があり
前公爵にずけずけものを言うのが
高橋洋さん演じるジェイクイズである。

衣装で感じはずいぶん変わるものだ。
「恋の…」熱血な学友だったが
今回は黒の帽子に黒の長い寛やかな衣装
髭も生やしていて大人の役どころ。
たっぷりと皮肉まじりのセリフ、
ほどよいトーンの声と滑舌のよさは
言うまでもないが
一瞬見せる無邪気な笑いが、ジェイクイズの
少年ぽさを強調している。
田山さんが純粋道化なら、
彼は知的なトリックスター、という役回りだ。

どのエピソードもけっこう楽しく
わかっていても笑わされてしまう
テンポは前作とかわらず緩やかではあるけれど。

役者さんのバランスもよく、お話もよくわかる。
いいお芝居だと疲れがとれる。
筋書きには関係ないけれど
舞台に「生きた」羊が登場してびっくりした。

まさか「めえ~」とは鳴かなかったが
芸名は「坂本メイ」なのである。
この楽しい趣向にみんな大受けで
出てくる度にどよめきが起こる。
アドリブなのかどうか田山さんが
「お前はいつも笑いがとれていいな」と語りかけ
また会場がどっと大笑いする。

蜷川さんの芝居のパンフレットを
わたしはとても気に入っている。
洒落てるなかにもちょっぴり古風で
今回の白地の表紙もよかった。
また中に写真がたくさんあり、役者さんひとりづつの
ページも読み応え満点だった。

もらったチラシに秋の公演予定があった。
次のシェークスピアは「オセロー」
ううむ、悲劇はどんなふうか、かなり行きたい。
吉田さんがオセロ役、
そして高橋さんがイアゴー
チケット取れるかどうか、それが問題である。

2007年8月8日(木)シアターブラバ
「お気に召すまま」

【スタッフ】
演出:蜷川 幸雄
作:W.シェイクスピア
翻訳:松岡 和子

【キャスト】
成宮 寛貴:ロザリンド
小栗 旬:オーランドー
吉田鋼太郎:前公爵
田山 涼成:タッチストーン
高橋 洋:ジェイクイズ
月川 悠貴:シーリア
大石 継太:シルヴィアス

清家 栄一:ル・ボー/貴族
妹尾 正文:アミアンズ/貴族
飯田 邦博:コリン
岡田 正:アダム
塚本 幸男:サー・オリヴァー・マーテクスト/貴族
二反田雅澄:オードリー/貴族
大富士:チャールズ
山下 禎啓:フィービー/貴族
外山 誠二:フレデリック公爵
鈴木 豊:オリヴァー
篠原 正志:貴族
高山 春夫;デニス/貴族
田村 真:貴族
神保 良介:ジェイキス・ド・ボイス
宮田 幸雄:貴族
杉浦 大介:ウィリアム/貴族
西本健太朗:小姓(日替わり出演)
桝井 賢斗:小姓(日替わり出演)
鵜澤正太郎:小姓(日替わり出演)
坂本 メイ:羊

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