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2008.01.15

鳥になる夢…「テイク・フライト」

梅田芸術劇場の椅子はいい。
席はちょうど中ほどだったが通路横で
舞台がすっきりと見わたせた。

大舞台らしくしずしずと幕が上がる。
ミュージカルだから生の音楽付き。
軽快な指揮と迫力ある音。

幕開けは荒れ野の景色から。
ふたつの恐竜の尾のような砂の山を越えて
二人の男が登場する。
この男達こそ人類で最初に空を飛んだライト兄弟なのだ。
兄がウィルバー・ライト
弟はオーヴィル・ライト
故郷から、飛行実験のためにこの地にやってきたところだ。

「テイク・フライト」は
空を飛ぶことに取り憑かれた人たちの物語なのである

大西洋を一人で飛び越えた
チャールズ・リンドバーグ
世紀の英雄である彼の、パリ到着までの
数々の苦労と情熱が描かれる。

主役はアメリア・エアハート
女性飛行士として、次々と新記録を作り、
世界一周飛行の成功を目前にして遭難する。

彼女の飛ぶ事への憧れは
白いドレスの少女だったときからだ。
時々舞台を走って横切るその姿。

おのおのの成功の時は微妙にずれているので
三つの物語は時計どおりにはすすまない。

飛ぶことに情熱を賭けた先駆者リリエンタールが
あいだあいだに登場してわたしたちの案内役をしてくれる。
演じるのはラサール石井で
少し滑稽な狂言回し役である。

舞台の上に
まるで箱船のような巨大な作り物が引き出される
(押したり引いたりしているのは池田成志と橋本じゅん)
その中には上下いくつもの(六個までは数えた)部屋があり
扉を開けるとそこは

チャールズの部屋だったり、
アメリアがくつろいでいたり、
銀行家のオフィスだったりする。
扉が開かないときは、全体が大きなスクリーンになり
映し出される飛行機の形や空が印象的。
ひとつだけコックピットに見立てた部屋にあかりが灯る。

アメリアとチャールズはたびたびそこに居る。
だがライト兄弟は、いつも地面の上に居る。
大型のグライダーで、とにかく空に浮かぼうとするが
何度も失敗を繰り返し、落っこちて転げ回るのも土の上。

地上から空へそして雲の果てへ
大空を駆けめぐる夢に賭ける
この三通りの人間模様は
時間が前後するのでなかなかに理解が困難。
プログラムをあらかじめ読んでいれば
もっとすんなり解ったのに、とちょっと後悔した。

歌は相当複雑で
覚えて口ずさもうと思えば
もう何回かは来なくてはいけない。


池田成志と橋本じゅんのライト兄弟は
セリフも歌も軽妙でよかった。
アメリアは天海祐希、雰囲気はぴったり。
女性飛行士のさきがけとしての新しさが
とてもよく出ている。
彼女の伴侶となるジョージがたいへんすてきだ。
(演じるのは宮川浩)
アメリアに対する切ない思いが
溢れんばかりに伝わってくる歌が絶品である。


チャールズ役の城田優
背は高いしスタイルはいいし
声もよく通って熱演である。
リンドバーグの不器用さと一途さを示すエピソードの数々、
好感が持てる役者さんだ。

狂言回し役のラサール石井はさすがだ。
ちょっとだけの登場だが
銀行屋役の小市漫太郎も面白かった。
もう少し見たかったけど。

影絵を使って群衆を表現するのはすてきだった。
最後の場面ではライト兄弟のグライダーを浮かばせたり
チャールズが空を飛ぶところを
気球が浮き上がるようにしてみたり
細々と味付けされているセットもなかなかのもの。

ライト兄弟のテーマ音楽は
コミカルでわかりやすいし
ふたりのおどけた感じのやりとりがスムースで
きゅっと話に引き入れられる。

一階席だと見えにくいオケピット、
指揮者の登場を含めて、幕があく気配は
二階から伝わってくる。
普段は逆の見え方だが
こういうのって悪くない。

ほんの僅かの時間、短い距離だが
人が鳥になった一瞬でフィナーレとなる。
(舞台いっぱいに浮かぶグライダー)


飛行機や飛行士の歴史については
通り一遍の知識しか持っていなかったので
苦労話はわかりにくかったし、
リンドバーグとエアハートが受けた熱狂的な
賞賛についてもあまり知らない。
だから、話の理解が浅くて、
感動が薄まってしまったのが残念である。

2008年1月4日(木)
 午後2時~4時45分
梅田芸術劇場 大ホール

配役
アメリア・エアハート  
天海 祐希
チャールズ・リンドバーグ
城田 優
ウィルバー・ライト
池田 成志
オーヴィル・ライト
橋本 じゅん

オットー・リリエンタール
ラサール石井
フレッド・ヌーナン他
小市 漫太郎
ピーター・バーク他
坂元 健児
ドナルド・ホール他
今  拓哉
ジョージ・パットナム
宮川 浩


脚本:ジョン・ワイドマン
作曲:デイビッド・シャイヤ
作詞:リチャード・モルトビーjr
演出・振付・訳:宮本 亜門
訳詞:森 雪之丞
指揮:デイビッド・チャールズ・アベル

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