« 2008年1月 | トップページ | 2008年3月 »

2008.02.28

明るく楽しく“乞食”が踊る「ベガーズ・オペラ」

入ってすぐにしつらえに目がゆく。
階段が縦に高く繋がりあちこちに網目のように
張り巡らされている。
舞台上に客席があってびっくり。
上手と下手に4列づつ(のようにみえた)
なのに少しも狭苦しく感じなかった。

ところは梅田芸術劇場のメインホール
さらに舞台の両袖に、
オペラのボックス席のようなスペースが。
ここも使うのかな、
雰囲気が出そう…と期待する。

席はほぼ中央でちょうど真ん中。
とても見やすいよい席だが
舞台上の席がちょっと羨ましい。

老いた役者が登場する。
白い鬘が音楽室でお目にかかる
古典派の作曲家みたいで、笑ってしまった。
「ベガーズたちにひと晩劇場を貸してやる」のだそうだ。
彼といっしょに待つうちに
客席後方から奇声をあげながら
ベガーズ(乞食たち)が登場する。
乞食らしく衣装はぼろぼろ。

先導しているのは詩人乞食のトム。
今夜の「オペラ」は
彼の脚本兼演出なのだ(そうだ)。

役者が乞食の役をやって
その乞食がオペラを演じる。
乞食役の設定とオペラでの役まわりはまた別なのだ。

これはパンフを読んで初めてわかったこと。
見ている間は
三々五々うち連れて袖へ退いたり、
脇のボックスに入るベガーたちの関係はわからない。
後で設定を読んで納得する。
やはり親しいもの同士が
劇を離れると一緒に語らったりしていたのだ。

一言でいうとたいへん華やかな劇である。
たくさんの人物の出し入れが無理なく
短い時間で行われる。
(これは「レ・ミゼラブル」のときと同じ)
歌は聞きやすくまた覚えやすく盛り上がりもある。
オケは舞台右奥に陣取り、
鬘をかぶった指揮者が
バロック風の音楽の棒をふる。
音響もひなびていて可愛らしい。

幕開け、ピーチャム夫妻(内縁関係)が
娘のポリーの事を心配している。
あの悪党のマクヒーにポリーは首ったけなのだ。
何とか二人を別れさせようと説得するが聞かない。
マクヒースはポリーに甘い言葉を投げ、
追いはぎの仕事に出かけてゆく。
この男、女にはめっぽう弱い。
そこでピーチャムは、彼の昔の女をスパイに仕立て
マクヒースを捕えさせる。
牢番のロキットとは昔から持ちつ持たれつ。
ところが彼の娘のルーシーも
マクヒースに籠絡され、彼の子を妊っている。
尋ねてくるポリー、迎えるルーシー、
二人の女はお互いを嫉妬して男を責める。

結局ルーシーは父の鍵を盗んでマクヒースを逃がす。
せっかく自由になったのに、
隠れ家に女を呼んでのどんちゃん騒ぎ、
またしてもお縄になるマクヒース。
今度ばかりは逃げられずに「死刑」に、
とその時、見ていた老役者から声がかかる。
「オペラに残酷さは似合わない」、として
作者の意図とはうらはらに
一転賑やかなダンスで幕が下りる。


出演者が粒ぞろい。
高嶋政宏…大柄で強そうで柄が悪い。
この劇は悪人ばかり登場する。
ケチなのから大悪人まで、
中でも高嶋は親分格でえらそうである。

主役の内野聖陽はとても可愛いい。
声は先ごろまで風林火山で聞き慣れていたし、
「メタル・マクベス」でもいい声だった。
ものごしが気障で柔らかく、なおその上に凄みもある。
心憎いばかりの女たらしぶりだ。

衣装は赤いフロックコート、ぴったり。
こんなに目立つ彼が、客席を駆け抜けて
舞台へあがる出のおりには
体を丸めていて目だたなかった。
「ベガー」としての彼は、気弱な男、と
設定されているからだろうが
気配の消し方はみごとだった。

相手役のふたりの女優がすばらしい。
笹本さんの甘く清純な歌声に対し
ドラマチックな島田さん
聞いているだけで引き込まれてしまう歌の魅力。
ダンスも含めて
ミュージカルって楽しい。

出演者の年代が若手から年配まで揃っていて
むかし知っていた役者に気がついたりする。
老いた役者を演じる近藤洋介、
見覚えがある気がして調べてみたら
なんと、白黒テレビ時代の人気番組
「事件記者」に出てたひとだった。
そのときは若手で颯爽とした「ブンヤ」さんだったな、
などと次々に思い出すのも楽しいことだ。
村井国夫とふたりで踊るみじかいダンス
拍手を受けて照れてるのが、なんとも微笑ましい。

劇の素材は暗いのに、
それを感じさせない明るい展開が気楽だ。
乞食詩人のトムと
劇中の小悪党など演じる役とを
いったりきたりする橋本さとし。
声もよくコミカルな演技ですてきだった。
歌はもう少し上手になってほしいな。
ラストシーンを悲劇にしてダメを出され
拗ねに拗ねまくる場面など面白くってたまらない。

「ベガーズ・オペラ」が書かれた時代は
オペラはハッピー・エンドでなければならない、という
「決まり事」があったそうで、
ここでのどたばたは、
お話の流れを無視したその当時のオペラへの
痛烈な皮肉になっているのだという。
(パンフレットから)

楽しく笑って見聞きしていても
台詞や歌に、みごとに現代に通じるものがあって
ドキっとすることが何度もある。
特にお金の扱いかた、
“金さえあれば…”何でもできる世の中、
泥棒たちの理屈は決して間違っていないと
思わせるものがある。
無理に現代風にアレンジしてないので
さらっと流して僅かに渋みを添える、という
演出が冴えている。


三時間が早かった。
トイレ休憩時にも出演者が客に話しかけたりして
サービス満点である。
その時の役者たちは「ベガーズ」なのだ。
それだから、客席もとてもとても盛り上がり
劇が始まるとすっと集中し
笑うところでは大笑い。
大会場がひとつになり、一体感につつまれて
気分はこのうえなくよかった。

2008年2月13日(昼)
於:梅田芸術劇場メインホール

ミュージカル「ベガーズ・オペラ」
キャスト
老役者       近藤 洋介
ピーチャム     高嶋 政宏
ミセス・ピーチャム 森 公美子
ポリー・ピーチャム 笹本 玲奈

マクヒース     内野 聖陽

ロキット      村井 国夫
ルーシー・ロキット 島田 歌穂

トム/フィルチ    橋本 さとし

 ※役名はオペラの役です

幸村吉也、小西のりゆき、村上勧次朗
高谷あゆみ、三谷六九、照井裕隆、宮菜穂子
高野絹也 Kuma、水野栄治、原田優一、
小此木麻里、山崎ちか、泉里沙、入絵加奈子ほか

演出・脚色  ジョン・ケアード

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008.02.20

ホールと神社…名人会と勉強会

寄席を体験してみてすっかり落語のファンになった。
「繁昌亭」はいつも満員で
チケットも取りにくい。
そこで今回は「東西名人会」なるものに行ってみた。

場所は、演劇でなじんでいるシアタードラマシティ。
さあて舞台のしつらえはどんな風だろう、と見ると
白地の屏風に見台が置いてあるだけ。
座布団は華やかな青だったが、
とてもあっさりしている。

寄席の華やかさとは対照的だ。

広い空間の真ん中に
「たったひとりきり」というのは
どんな気分のものなんだろう。
この日も開演よりよほど前から満員御礼。
やっぱり年齢の高い男が目立つ。
落語って男のひとが好む芸なのだろうか。

関東から柳家喬太郎、
後は全員関西勢、大阪の雰囲気いっぱいだった。
意外にも、その喬太郎の噺が一番面白かった。
笑わせ方もおおげさではなく、
小気味いいテンポで話が進み、
サゲまでテンションが落ちなかった。

もちろん地元勢もそれぞれ熱演だったが
寄席ではぴったりくるくすぐりや
ややきわどいネタが
このホールの広さでは
なんとなく拡散する感じがする。

どのひとも座布団から伸び上がったりして
おおきな所作だったのは、
客席の後ろまで、笑いが届くように、だったのだな。
後ろの席から、交代の合間に
「ちりとてちん」についてのうんちくが洩れ聞こえる。
この満席、やっぱりドラマの影響もあるようだ。

休憩十五分をはさんで二時間半、
たっぷりきけたなと感じたし、
ベテラン揃いだったけど
寄席で聞く落語のほうが面白い。

第八回 朝日東西名人会
2008年 1月24日(木) 午後6時半開演
桂 春菜   「昭和任侠伝」
柳家 喬太郎 「粗忽長屋」
笑福亭 鶴光 「木津の勘助」
    中入り
笑福亭 仁智 「トクさんトメさん」
桂 南光   「素人浄瑠璃」


また別の日に、地元でやっている
米朝一門の「勉強会」を見に行く。
東山安井の安井金毘羅会館といえば
大きな通りの面して鳥居のあるところだ。
お参りしたことはないけど知っている。
交通の便もよかったので出かける。
夕方から強い寒さ、
遠かったら遠慮していたと思う。

開演一時間前に、すでに三十人ばかりの列ができている。
常連らしい人たちが
「今日はすごいね」「よね吉さん出はるしかいなぁ」
などと話している。
ここでも“ちりとてちん”ブームか。
テレビとはすごいものだ。

大広間の床の間の前に高座。
ちょっと狭くて上り下りが大変そうだ。
三味線の音が気分を出している。
桂米朝一門の若手は
ここで初高座を飾るお弟子さんが多いそうな。
後で調べて気がついた。

中庭に面したガラス戸の近くに
座布団席を確保したのが三十分前。
ところが、どんどん人が詰めかけてくるので、
廊下にもびっしり座布団が並び、
手洗いに行きくても通りにくい状態である。
前座さんから「もうちょっとお詰め願います」と
二度、三度と声がかかり、
ほんとに膝が触れあうほど、満員電車の中みたいになった。

正座で八席聞くのは、じつはかなりつらい。
ただ、どの人の噺も力がこもっていて、
知ってる噺も初めての噺も
それぞれに面白いから何とか我慢できた。
この狭さとマイク無しの地声なのが
かえって味わいが出てよい。
よね吉さんが登場したときの拍手はひときわ大きかった。
じつはわたしも彼が出ると知ってやってきたのだ。

老練な雀三郎さんの新作落語
同年代としては懐かしさこのうえなし。
よね吉さんの「ちはやふる」
上り坂のひとらしく華やかな気が立ちのぼる。
しん吉さんの「深山隠れ」
これが落語、講談ではないの、という意外な噺だ。
みな同門だから、なんとなく語りくちが共通

羽織を着ているひとと着てない人、
「真打ち」になると羽織姿なのかしら。
脱ぎかたにそれぞれ特徴がある。
噺家さんの和服姿、なかなかすてきである。
そのうち、出ばやしも聞き覚えられるだろう。

“たっぷり”聞き終えた後はふっくりと温まった。
速歩でバス停に急ぎ、小一時間で帰宅。
近くの催しは楽だ。

2008年2月6日(水)18:00開演
桂 さん都  「ろくろ首」
   雀五郎  「宿屋町」
   吉之丞  「肝つぶし」
   出丸    「向う付け」
   よね吉  「千早ふる」
   雀三郎  「神頼み青春篇」
   宗助    「蔵丁稚」
   しん吉  「深山隠れ」

| | コメント (2) | トラックバック (0)

« 2008年1月 | トップページ | 2008年3月 »