夏の無料催し…片山家装束展
片山家の虫干しに合わせ毎年、
京都文化博物館で装束展が行われる。
去年も一昨年も、暑さと仕事で
行けなかった。
今年の日程は平日なのでちょうどいい。
十周年とチラシにあった。
テレビで「井上八千代」さんの舞をビデオ放映している。
いつも舞妓さんの稽古始めのときに
うなずきながら座っていた先代の舞台である。
ひろい和室二間を一続きにして、
唐織、水衣、長絹、狩衣、
並んでいる装束は三十数点。
遠目にはけっこう地味に見える。
「手を触れる」のは禁止だが
いくら目を近づけても構わない。
目が悪い私にとってこんなに嬉しいことはない。
じっくりと、ひとつひとつの模様を丹念にみる。
わりに早く着いたので、まだ人は少くてどの展示も
すぐ近くで見られた。
扇も鬘帯も、「こんなふうになっているのか」と
細かな部分の柄や細工に改めて感心する。
前日の「都の芸能」で、味方玄さんが
ざっと能装束と面についてしてくださった解説が
とても役に立った。
一隅が面のコーナーになっていて、
着けてみてもよいらしい。
壁面にかえられているのは「女面」がほとんどだ。
リクエストが多かったので、と解説のかたがおっしゃる。
もし去年なら、「それはよかった」と喜ぶところだが、
最近は、“老人のや、神様の”面にも
興味があるので、ほんの少しだけ残念だ。
どの面もひとつとして同じではない。
「寸法が決まっています」とのことだが
目元口元、ほほのあたりなどで、
同じ「若い女の面」でも可愛かったり色っぽかったりで、
作者によっても時代によっても
これほど違うものか、と
改めて不思議を感じた。
気に入ったのは「万媚」
増の端正な美しさや、小面のかわいさもよいが
切れ長の目尻に、何ともいえない笑みが
漂っていて懐かしい感じがする。
面の解説が終わると、引き続き
そのマイクを持って片山九郎右衛門さんが
一点づつ装束の解説をしてくださった。
「これは、いついつ、何をしたときに使いました」
とか「こういう装束は何々のときに付けます」
などと演目を教えてくださるので、
見たことのある曲の記憶と重ねると、
よりより味わい深く感じる。
ご当主は思っていた以上に小柄であられる。
つややかな張りのある声と歩み、
それがとても愛らしい。
小柄だからこそ着られる装束があるそうで
(にっこり笑って「わたししか 着られませんのです」
とやや得意げにおっしゃるのだ。)
特に古いものは、おしなべてみな小さいようだ。
新しいもの(写し)か古いものかは
私の目では分からないが、
「古いものは古いものと合わせます」
とおっしゃる。
わたしがぱっと見て気に入ったのは
「蜻蛉」のもようの長絹。
幾何学的にきっちりと向かい合わせに並んでいる蜻蛉たち。
「目は「金」のと「銀」のとあります」と聞いて
あとでもういちど見に行って納得する。
ほくほくして帰ろうとすると、
受付のところに、片山清司さんがおいでだった。
白い着物に薄藍の袴。
まるで絵の中の人のような美しさ。
頭を下げるのがやっとだった。
華やかな扇が映っているシールを記念に買う。
プリクラ風な手作り感がいい。
書籍もたくさん並んでいたが、
予算不足で今回は見送る。
文化博物館は立地も街中で
交通の便もよい。
比較的歴史は新しいが、
土産物のある一階は、
「京都」らしくしつらえてある。
地元民だからふだんはのぞかないのだけど、
満ち足りた気分の続きで、つい、和紙の店に入り
「源氏物語一筆箋」(玉鬘)を買う。
ちょっと観光客気分が楽しい。
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